東急東横線・白楽駅。改札を抜けてすぐ、レトロなアーケードが続く六角橋商店街「ふれあい通り」。昭和の面影を残す路地の中央付近、白を基調にしたあたたかな店内が現れる。あちらこちらに散りばめられたキツネのモチーフが、店主姉妹の人柄を物語る、ここが「キツネノアトチ」だ。

店を切り盛りするのは、姉のミクさんと妹のレンさん。前身は同じ場所で営まれていた「葡萄とキツネ」。新潟へ旅立つことになった先代が、二人の腕を見込んで託した店を、2024年1月、姉妹は新しい屋号で受け継いだ。料理は姉ミクさん、接客とスイーツは妹レンさん。「人間関係を大切に」というふたりの姿勢は、皿の隅にも、注がれる一杯にも滲む。

看板に「お任せ前菜盛り合わせ」あり。「あれもこれも食べて欲しいから、気がつくとたくさん盛っちゃう」とミクさん。国産牛の温製カルパッチョや季節野菜の一皿は、酒の肴としても料理単品としても成立する完成度。季節ごとに更新されるスペシャルメニューでは、旬の食材を「最高においしいかたちで」表現する仕事ぶりだ。

ワインは、ライトから重厚まで幅広く。初心者でも玄人でも、その日の気分や料理に合うものを姉妹が一緒に選んでくれる。ビールも見逃せない――レンさんが注ぐ一杯は、同じ銘柄でも別物の表情を見せる。山梨「うちゅうブルーイング」のDDH IPAなど、商店街では随一のクラフトビール品揃えも自慢。

金曜は人気ベーカリー panopiedra のパンが入荷、土曜はランチ営業、日曜にはカレー屋が間貸し――商店街の中継地点のように、一週間がリズムを持って動く。1人飲み、女子会、デート、近隣のプロ料理人の打ち上げまで客層は柔らかく多様。「イタリアみたいに、お通しとワイン1、2杯でも気軽に立ち寄って欲しい」――そう語るオーナーの想いそのままの、街の食堂である。