白金高輪駅から、麻布十番方面へ向かう坂道。喧噪から一本入った南麻布の路地に、暖簾を出す一軒がある。「やきとり嶋家」。看板の控えめさに反して、扉を開ければ、香ばしい煙が時間を一段ゆっくりにする。
看板はあくまで一串。オリジナルの「熊野地鶏」を、自家製の熟成鶏専用冷蔵庫で寝かせ、旨味を引き出してから備長炭の上へ。鶏本来の弾力に、熟成によるコクと甘みが重なる、嶋家の真骨頂が一串に詰まっている。
席種は、職人の所作を間近で見られるカウンターから、グループで囲めるテーブル、そして特別感のある半個室まで。テラス席はペット同伴も可で、犬連れで気軽に立ち寄れる焼鳥店は港区でも貴重だ。2階はワンフロア貸切が可能で、会食や接待にも幅広く応える。
焼鳥店としての矜持と、現代的な使い勝手の良さ。その両方を一軒の中に成立させているのが、嶋家の在り方である。



