興福寺
近鉄奈良駅から最も近い世界遺産で、奈良観光の入口にちょうどよい。境内には朱色の中金堂や室町期再建の東金堂(国宝)が建ち、国宝館では阿修羅像をはじめとする天平の名仏がまとめて拝める。シンボルの五重塔は現在、明治以来約120年ぶりの保存修理に入り全体を素屋根で覆っているため当面その姿は見られないが、その分だけ仏像群と伽藍の歴史を間近に味わえるのがいまの興福寺だ。中金堂・東金堂・国宝館は個別拝観のほか共通券もある。拝観料や開門時間は変わることがあるため、訪問前に公式サイトで確認を。
近鉄奈良駅の階段を上がると、人の流れがもう東を向いている。ゆるい坂の先に興福寺の五重塔が立っていて、それを目印に歩き出すと、芝生が現れたあたりで最初の鹿に出会う。柵もなければ案内係もいない。世界遺産の境内と野生の鹿が、同じ一枚の地面の上にただ並んでいる——それが奈良公園一帯のいちばん不思議なところだ。坂は急がず、見どころと見どころの距離も近い。だから地図を握りしめるより、塔から大仏へ、大仏から朱塗りの社へと、目に入った方角へ素直に足を運べばいい。駅側の興福寺から東の山手まで、標高をすこしずつ上げながら歩いていくこの道を、午前の光から夕方の眺めまで、順にたどってみる。拝観料や開いている時間は施設ごとに違い、季節でも動くので、出かける前にそれぞれの公式情報をのぞいておくと安心だ。
近鉄奈良駅を出てすぐ、興福寺の五重塔が目印になる。鹿の鳴き声と参道の砂利を踏む音を連れて、東大寺・春日大社・若草山へ。世界遺産と野生の鹿が同じ地続きにある、奈良の東側を歩く話。
マチノワ編集部
順位ではなく、編集部が選んだ5スポットを順にご紹介します。近鉄奈良駅の階段を上がると、人の流れがもう東を向いている。ゆるい坂の先に興福寺の五重塔が立っていて、それを目印に歩き出すと、芝生が現れたあたりで最初の鹿に出会う。柵もなければ案内係もいない。世界遺産の境内と野生の鹿が、同じ一枚の地面の上にただ並んでいる——それが奈良公園一帯のいちばん不思議なところだ。坂は急がず、見どころと見どころの距離も近い。だから地図を握りしめるより、塔から大仏へ、大仏から朱塗りの社へと、目に入った方角へ素直に足を運べばいい。駅側の興福寺から東の山手まで、標高をすこしずつ上げながら歩いていくこの道を、午前の光から夕方の眺めまで、順にたどってみる。拝観料や開いている時間は施設ごとに違い、季節でも動くので、出かける前にそれぞれの公式情報をのぞいておくと安心だ。
近鉄奈良駅から最も近い世界遺産で、奈良観光の入口にちょうどよい。境内には朱色の中金堂や室町期再建の東金堂(国宝)が建ち、国宝館では阿修羅像をはじめとする天平の名仏がまとめて拝める。シンボルの五重塔は現在、明治以来約120年ぶりの保存修理に入り全体を素屋根で覆っているため当面その姿は見られないが、その分だけ仏像群と伽藍の歴史を間近に味わえるのがいまの興福寺だ。中金堂・東金堂・国宝館は個別拝観のほか共通券もある。拝観料や開門時間は変わることがあるため、訪問前に公式サイトで確認を。
興福寺から東大寺へ歩く間そのものが、このスポットだ。芝生の広がる園内には約1,000頭以上の鹿が暮らし、参道や売店のそばで鹿せんべいをねだってくる。ここの鹿は餌付けされたペットではなく国の天然記念物に指定された野生動物で、おじぎのような仕草を見せる一方、せんべいを焦らすと噛んだり頭を突いたりすることもある。袋や地図など紙類を口に入れさせない、急に驚かせない、という距離感が楽しむコツだ。園内にゴミ箱はなく、食べ物のゴミは鹿の誤食を防ぐため必ず持ち帰りたい。入園は無料で、東大寺へ向かう動線にそのまま重なる。
奈良といえばここ、という旅の主役。参道入口の南大門には運慶・快慶らが手がけた高さ8mを超える金剛力士像が左右に立ち、門をくぐるだけなら無料で見上げられる。その奥の大仏殿(金堂)に、像高約15mの盧舎那仏、いわゆる奈良の大仏が座る。正面の幅約57m・棟までの高さ約49mという巨大な木造建築の堂内に入ると、見上げる角度そのものが他では得られない体験になる。柱の根元には大仏の鼻の穴と同じ大きさといわれる穴があり、家族連れが列をつくる名物だ。大仏殿は拝観料が必要で、開門時間は季節により変わる。最新の時間と料金は訪問前に公式サイトで確認を。
奈良公園の東奥、御蓋山のふもとに鎮座する全国の春日神社の総本社。朱塗りの社殿へ続く長い表参道には、奉納された石灯籠が苔をまといながら数千基並び、樹々の間を抜ける光と相まって独特の静けさをつくる。回廊に吊られた釣燈籠の連なりも美しく、東大寺の豪壮さとは対照的なきめ細やかな美が味わえるのがこの社の魅力だ。境内に入って参拝するだけなら自由で、御本殿を中門前から間近に拝む特別参拝は別途初穂料がかかる。東大寺からは公園内を南へたどれば徒歩圏。特別参拝の受付時間や初穂料は変わることがあるため、公式サイトで確認を。
奈良公園の東に芝生でなだらかに覆われた標高342mの山で、一日の締めくくりにふさわしい展望地だ。三つの笠を重ねたような三笠の形が特徴で、ふもとのゲートから入山して芝の斜面を上ると、東大寺大仏殿の大屋根や奈良市街、晴れた日には生駒の山並みまで一続きに見渡せる。山頂付近にも鹿が草を食む姿があり、街を眼下にした稜線歩きはここならではの景色になる。入山は有料で、開山期間(毎年3月第3土曜〜12月第2日曜)と9:00〜17:00という時間が決まっており、冬季や夜間は上れない。当日の開山状況・入山料は訪問前に公式情報で確認しておきたい。
大仏、鹿、朱塗りの社、街を見下ろす芝の山。奈良の半日は、駅から東へ歩くだけで揃ってしまう。マチノワ編集部
朝のうちに興福寺の境内へ入り、五重塔を見上げてから東へ向かう。参道では鹿がのんびり寝そべっていたり、まっすぐ近づいてきたりするが、鹿せんべい以外の食べ物や紙袋は口に入れさせず、急に驚かせないのが奈良での礼儀だ。東大寺では、南大門の金剛力士像に見下ろされながら門をくぐり、大仏殿で奈良の大仏に対面する。ここで昼をはさむのがちょうどいい。午後は春日大社へ。苔むした石灯籠が続く参道を抜けると、朱塗りの社殿が森の奥に現れる。締めくくりは若草山。芝の斜面を上りきると、歩いてきた公園と奈良の街並みがひと続きに見渡せて、半日の道のりがそのまま足元に広がっている。一点だけ、若草山は上れる季節と時間が決まっているので、雨や冬の夕方にあたりそうな日は、屋根のある東大寺ミュージアムや興福寺国宝館へ寄り道して、国宝の仏像とゆっくり向き合うのもいい。歩き終えてみると、塔と大仏と社と眺めが、ばらばらの観光地ではなく一本の道としてつながっていたことに気づく。それが、駅から東へ歩くだけの奈良の心地よさだと思う。